「危険を伴う除霊は割増請求させていただきますわよ」
「どうぞもうなんでもいいんで・・・」
「アラ相当お困りのようね。ここは姉妹の力が必要なわけよ
モネー!
いきなり奥の部屋へ向かって絶叫した姉にびくりとする。
しずけさ。
遠くからゲーム音。
美人の姉上は舌打ちをした。

俺と旦那は家に上げられる前にこれでもかと荒塩を振りかけられた。
「こうゆうの効くわけ?おねーさん」
「雰囲気よ」
・・・応接間に通されて、目の前にははなはだ不安の残る霊媒師、もといホステス、もとい巫女の姉妹、の姉。わらにもすがる、というのはこうゆうことだ。ほんとに藁だ、藁のしかも枯れたやつだと思いながら万事屋に向かい、途中でブラブラしてる旦那に会った。とにかく俺にはこの事態を打開するすべが無かった。「アラそう、じゃ〜いい娘いるよォ霊験アラタカ、しかも美人」との天パの言葉を(まあ美人に越したことは無い)ってついてきた、それでいいの俺?万事屋への紹介料と巫女姉妹へのお供え(?)で俺の懐が貧しくなるのは間違い無い。あっ、コーヒーとかおかまいなく。だから相談料安くして欲しい。




「通り道になっているのね」
コーヒーの湯気の向こうで、風情のないことに彼女は古い地図をひろげるでなく、なにか占い器具を取り出してきて意味深に押し黙るでなく、俺の持参した道路地図を一瞥して言って、美しいマニキュアの指ですう、と一本線を引いた。墓地も八木邸も屯所もなぞられた。
「霊が成仏するために、エネルギーの流れに乗ろうとしているの」
彼女の指は最終地点のターミナルをさしていた。エネルギーの集まるというところ。俺はロケットにとりすがり、発射されて行く亡者達を思い浮かべた。宇宙葬か。


「屯所が霊の通り道に・・・ってじゃあ、屯所に居る限りずっと見かけることに!?」
「そうね、流れがずれることは早々無いわね」
「引っ越すしかないのか・・・」
「やめれば?真選組」
「もォ〜他人事だと思って!」
やめてくださいよ!と言おうとしてアネさんのまともな視線に当たる。


「あなたみたいなお人よしが霊なんか見ちゃって。人を殺せるの?」


「・・・どう思われてるか知りませんけど、人なんてそんな簡単に殺してませんから」
半分嘘で半分本当のことを言った。
アネさんはもう興味なさそうに道路地図をめくっている。





アネさんと旦那の二人は目で会話して「あとで真選組に請求書まわすからぁ〜」
(ふっかける気だ!)
「俺個人宛でお願いします」
俺はさらに金銭面での不安をも抱えて屯所に帰った。




姉妹宅を出たのは日が傾き始めた頃。晴れが続いて乾いた道路が埃を舞い上げる。




俺は一番最初に見た男の霊を思い出していた。彼はひょろひょろに痩せていて、たぶん俺達みたいな体力勝負な仕事はしていなくて。まだ若かった彼にはどんな野心があったのか、あるいは無かったのか。何を見つめて彼は通りぬけて行ったのか。いつ彼は最後を迎え。どんなふうに。




・・・急いで帰らなければ。

(もし自分が息の根を止めたなら、そいつに追いかけられるのだろうか)







急いで帰らなければ。俺は人を殺したことは無いけれども。


(やめれば?ってあれは、俺の為に言ってくれたのかも)






















「山崎さん!」
屯所の門に、八木さんの所の番頭さんが居た。この小太りのおじさんは、いつも赤い顔色を青くしていた。そして駆け寄ってくる。
「大変なんです、通夜の相談に行ったうちの若いのがあそこの寺の住職が監禁されてたのを見つけて、」
指さすあそこ、は斎藤さんが散歩する墓地の寺だ。将軍家菩提寺。
「住職って・・・あの、背の高い、わりと若い?」
「ええっ!?違います、住職はわたしとそう背が違わない人ですよ、それに50歳は過ぎてて、じゃああなたまさか、」
おじさんはそこで咳き込む。

待ってくれ。2週間前俺は、あそこで。

「あなたまさか犯人を、」
おじさんはがたがた震えている。




・・・俺はあそこで「背の高い住職に」お茶をご馳走になった・・・!

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