通りぬけ   

























(誰か、走っている・・・)

畳に裸足で。こどもだろうか、こんな騒々しい・・・走るなら外で。屯所の前は車も通るから、川べりのほうまで行っておいで。腹は減ってないかな。確か舶来の菓子があった。子供ならよろこぶだろうな。教えてやろうか・・・ 



・・・・・・イヤ待て 俺 

今は何時だ?昼だと、俺は昼寝しているのだと思っていたが違うようだ。
俺は起きているのか。視野は青く、こどものもののような足音は遠く・・・近く。

不意に意識がはっきりして、自分がどの方向で横になっているかもわかった。同時に冷や汗が噴出した。明け方の月がヒトの陰を、俺の目の前の障子に映し出したからだ。侵入者か。夜出勤務から交代したばかりの俺になんて仕打ち。
布団をはねのけて刀までどうやって手を伸ばすか数秒思案しいざ、となったが体が動かなかった。そして障子が開かないのにそのヒトは部屋へ入ってきた。入ってきたのだ。年恰好は俺とさほどかわらない男だった。あらぬ方向を向いて見開いた目で、俺を踏みつけ乗り越えて、

走っていってしまった。

俺は踏みつけられたのだ。
さくさくと布団を踏みしめる音と、その後にまた、ぺたぺたと畳を裸足でかける音とが聞こえて、・・・消えた。





悲しいかなツッコミ属性。俺は一人声にならない「えええええ?」を数回繰り返し、でも耳の奥にこびりついた足音は消えなかった。






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